2023年05月

前回のブログでミニループの利得は、EFHWロッドアンテナより-6dB程度低いという測定結果でした。実際にフィールドで使ってどれくらいの変化があるのか試してみたくなりました。

アンテナの性能比較では、SSBなどでは受信でアンテナを切り替えて信号強度を比較するのが一般的ですが、FT8でもSNが読み取れますので同様の比較が行えます。しかし、FT8では多くの方がPSKR(PSK reporter)を使って飛んでるチェックをされているので、今回はこのツールを使ってアンテナ比較をしてみることにしました。

移動場所は、144MHz 1mWで交信実績のある高尾山。今月2度目になりますが、長雨のあとの5/24に登ってみました。お天気も良いので大勢の人が山頂におられましたが、前回同様、こちらの設備は目立たないので山頂で休んでいる方の間に座って運用してみました。

まず、PSKRのレポート機能は、最低15分、最大24時間のレポートが表示されます。最低15分という機能を使って、最初に利得の低いミニループアンテナを使って送信して、15分以上たってからEFHWロッドアンテナでCQを出してみることにしました。

実際には、時間がたつことで受信されているレポーターの数やアンテナ方向が変えられたりしますがHFと違ってコンディションの変化が殆どありません。意外に平日昼の144MHzでも大勢の方がFT8の受信をされているので視覚的にわかって面白いのではと思いました。

①ミニループアンテナ
●設置状況...ループ平面の真横に電波が強く放出されますので東京、千葉がカバーできる方向に向けました。
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●結果
平日のお昼ですが、CQを出すと早速呼ばれてスマホがどんどん交信していきます。出力たったの1mWですが144MHzのFT8の移動は本当に面白いです。早速PSKRをみると千葉県まで飛んでました。高尾山は地図上のXの位置になり、距離にして96kmくらいです。実際にこの局と交信できました。
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②EFHWロッドアンテナ
●設置状況は写真の通りです。
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●結果
設備を切り替えて交信を続けました。15分くらい経過してPSKRをみると下図のようにかなり飛んでいるようでビックリ。あらたに受信された局の受信レベルをみると-17dBから‐21dBとなっており、これらは、EFHWロッドアンテナにしてようやく届いたことが分かります。

最終的には30分で5局と交信できました(平日のお昼なので数局交信すると呼ばれなくなります)。千葉県の外房や茨城県くらいまで飛んでいます。やはりアンテナの性能差はかなりありますね。

下図の白文字の3局がミニループの時にも受信されていた局になりますが、受信SNを見ると近くの2局は、+6dBと+10dB強くなっていてアンテナの利得差とほぼ一致するような結果が得られました。

また、千葉の局は反対に-5dB弱くなっていることが分かります。これは??ですが前にCB機でここから木更津の局と交信したときに周期的なフェージングが大きくあったので東京湾を挟むことでその影響があったのではと推測しています。

いずれにしても受信できている局が一度に見られてそれぞれのSN値が一度に取得できるというのは、素晴らしいものです。単なる「飛んでるチェック」ツールとしてでなく、アンテナ比較実験などにも活用できますので活用してみてはいかがでしょうか。

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最後に今回の富士山です。雨上がりに登ったのでこの時期としては最高の景色がみられました。長雨が続きますが、外にでてみるとよいことがありますね

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前回製作したEFHWロッドアンテナは、よく飛ぶので気に入っているのですが、長さが1mと街中では結構目立つので鞄の中に入れたままステルス運用ができるようなものを考えてみました。そして、FM放送やエアバンド受信にも対応できるようなものができないか考えてみました。

①アンテナの原理
下図の左のEFHWアンテナのマッチング部分は可変方式で広帯域ですのでハイインピーダンスのアンテナとマッチングが取れるのでエレメント長を可変すれば広帯域に対応できます。しかし1m長のロッドアンテナでは高い周波数には可変できるのですが、FM放送などに対応しようとすると2m近くの長さが必要になります。ここで、GAWANT方式のような極端に短いアンテナで共振器だけ合わせることもできますが、性能的にはかなり劣ります。

そこで下図の真ん中のように共振ループを使うことにしました。小型のループでもコンデンサC2の値を大きくすることで低い周波数にも共振させることができます。共振時のC2の両端のインピーダンスは最大になるのでこれとEFHWのチューナー部分と組み合わせれば広帯域に使えることになります。
加えてC1とC2は並列接続のため実際は1つの可変コンデンサで使うことができそうです。市販品を調べてみると回路とかは不明ですが海外製品でも同じようなものもあるようでした。

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②試作
前回のEFHWチューナーの回路と同じものを使って直径21cmと13cmの2種類のものを試作してみました。銅線は、昔自作したリニアアンプの電源トランスが焼損したときに銅線のみ取り出したものです(笑)

ポリバリコンを使って周波数を可変してみたところ,80~180MHzくらいまで綺麗にVSWRが下がりましたので使えそうです。

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③特性比較
3-1 VSWR特性
帯域特性を比較したものを写真で示します。右の小さい方のループがやはり狭帯域となります。
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また、EFHWロッドアンテナとも比較してみました。下写真のようにEFHWロッドアンテナの方が帯域は広いようです(右がEFHWロッドアンテナ)
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3-2 利得、フロントサイド比など
上の写真のアンテナアナライザー(TE2101)を電界測定時の信号発生器として使用しました(SPANゼロ設定で広帯域の信号源として使えます)。アナライザからの信号レベルは大きいためアッテネータをつないで無許可の範囲として垂直のアンテナで距離5mとしました。また、電界強度受信機はWVU604F2(144MHz拡張版)を使っています(絶対値はあっていないので相対値で比較用としてご覧ください)。

結果からまとめると以下のようになります。
(1)ループの直径で利得差が割とある。
(2)ループのFS比は4~5dB程度
(3)EFHWロッドアンテナの利得は垂直ダイポールと同様と考えられるので、直径21cmのミニループの利得は-6dB、直径13cmは-11dBとなる

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144MHzは、これまで自宅のベランダにJ型アンテナを釣竿に這わしてあげていましたが、意外に良く飛んでいるで移動用に作ってみたいと思うようになりました。

このアンテナは基本的に1/2波長の長さの導体を50Ωに給電するためのマッチングセクションが備わっており、その形がJの文字に似ているので名づけられています。昔使われていた300ΩのTVフィーダーなどを使って簡単に自作できますが、移動の時に無線機に直結して使えるものを作ってみたくなりました。

以前430MHzでモービル用につくったことがあります(430MHzでの自作例)が144MHzとなるとエレメントが1m長くらい、そしてマッチング部も長さに加える必要になりますので移動用には考慮する必要があります。

今回、移動用に持ち運びも考えたときにSOTAでよく使われているEFHWアンテナと同じであることを思い出し、そのマッチングを使えばマッチング部分の長さは不要になり、エレメントもロッドアンテナを使えばよいと思いつきました。

ハンディー機などの内蔵アンテナは、1/4波長のものが殆どで下図の左のような動作になります。電流分布の最大点はアンテナの根元になります。また、グラウンド側はトランシーバーの筐体が小型のため十分な接地効果がなく人体が代用しているという動作になります。

下図の右のEFHWアンテナだと、動作的には垂直ダイポールと同じになりますが、電圧給電のためグラウンド側には殆ど電流は流れず、電流分布の最大点の高さも稼げるため、良好な動作が期待できます。
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全体像はこんな感じです。
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ロッドアンテナは1.15mのものを使用しました。実際には少し縮めて1.02mくらいで使います。マッチング調整がありますので、あまりシビアになる必要はなく移動時にわかりやすいように先の1段を縮めるとか決めておいてマッチングを合わせておくとよいと思います。

マッチングは、T32-10のトロイダルコアに7回巻きで10pF程度のトリマコンデンサで共振させることができます。アンテナインピーダンスは5~10kΩ程度になり、50Ω給電の場合はアース側から2回程度のところで簡単にVSWRが落ちます。

マッチング部です。
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運用は、WVU-604Fを144MHzに改造対応したFT8トランシーバーを使っています。このトランシーバーは、1.8~50MHzの仕様で頒布していますが、回路とソフト変更で144MHzも運用することができます(ただし、結構な規模の回路を追加する必要があり、現状は近接スプリアスの影響から最大1mWしか出すことができないので,144MHzバージョンを作るか悩んでいるところ)。

1mWというと笑ってしまうと思いますが、144MHzのFT8では結構楽しめるのではないかと最近これをもって山に移動して試しています。今のところ1mWとこのアンテナで高尾山から100km以上離れた千葉の外房程度まで飛んでいるので、こんな遊びをやってみたい方が多ければ、トランシーバーとアンテナの頒布も検討してみたいと思います。

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JINKING 7.2mのカーボン釣竿アンテナは前のレポートの通り使えることが分かったのですが、仕舞い長が77cmとリュックには入りません。山歩きにリュックに入れて使えるものがないかとアマゾンで探してみました。


①仕舞い長45cmのカーボン釣竿
購入したのは、これです。仕舞い長45cmで6m程度のカーボン釣竿を見つけましたのでオーダーしてみました。

 

まずは、前回のJINKINGのときのように表をカッターナイフで削ってテスターで電気抵抗をチェック。塗装やカーボン含有量の違いなのか、なかなかうまく測れませんでした。

仕方がないので、同様に目玉クリップで竿に、そして10mのカウンターポイズをカプラーに接続してマッチングできるか試してみたところ全バンドダメです。どうやら給電部がうまく接続できていないようでした。

②アルミパイプに差し込んでマッチングしてみる
ということでSNSで各局がやられている給電方法をみたところ他の竿ですがアルミパイプに差し込んで使われている方がおられたので1m長程度のパイプに差し込んでマッチングを試みました。この方法で7~50MHzまでマッチングがとれたので確実に竿に給電できれば使える感じがしました。


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③給電部の製作
とは言え、せっかく竿が短くなったのに長いパイプを山歩きに持っていくようではお話にはなりませんよね(笑)。そういうことで、極力45cmの長さの最下部に可能な限り結合させるように製作します。まずは、外側のグリップ部分と外部の塗装をカッターナイフで取り除きます。
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次に銅テープを貼りつけます。購入したものは裏面が糊になっていて導通がないので全面を覆うように縦方向に3枚貼り付けました。そして表面のテープのつなぎ目を半田付けして接続します。これで電気的にもすべて覆うことができました。
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給電部は。被覆線をはんだ付けしました。
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最後に自己融着テープを巻いて完成です。ちょっとダイナマイトのような危ない感じなので飛行機などの荷物検査では通れないかもしれません(笑)
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④マッチング
前回の自作カプラーで7~50MHzまでマッチングはとれましたが、下の周波数では余裕がなさそうな感じでした。そのため、カプラーのコイルの巻き数を1回増やしています。同時にアンテナカプラーも作り変えました。変更点は以下の様な点になります。

1) TE2101アンテナアナライザーを下部に直結してスイッチで切り替えられるようにした。バンド切り替えの度に繋ぎ替える必要がなくなり非常に便利です。

2) アンテナカプラーを釣竿にベルト固定できるようにした。アンテナと離しておいておくと操作のたびに手を離すとチューニングがずれて不安定になるのが防げます。また置き場所にも困りません


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⑤運用確認結果
前回同様、7~50MHzまでバンドを変えながらPSK reporterで飛び具合を確認しました。平日ですが時間は同じ午前中で、設置場所は、2階のベランダ、そして出力は200mWです。使用感としては、JINKINGの7mの方が飛んでいたような感じもしますが、コンディションのせいかも知れません。

●7MHz...あまり呼ばれませんでしたが前回同様に飛んでいるようです

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●28MHz...DXまで飛んでいるので使えそうです

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⑥現用のタワー上のアンテナとの比較
ここまでみるとQRPでも十分遊べそうな感じです。しかし、現用のタワー(15m高)上のアンテナに接続してみて比較してみて驚きました。地上高の違いや建物の影響があると思いますが、やはりきちんと建てられたアンテナと比較すると大きな差があります。やはりアンテナは大切ですね。


●21MHz...カーボン釣竿アンテナでは北海道が精いっぱいだったが、Dipoleでは南半球まで飛んでいる(21MHzはQRMが多いのでQRPの場合は潰されて受信までいかないことが多いので差が出やすい)
比較15m


●50MHz...カーボン釣竿は近所のみ。6エレを南西方向でCQを出したところ150km位先でも受信されていて驚きました。50MHzの地上波なのでアンテナ高と偏波面の違いが大きいですね
比較6m


カーボン釣竿アンテナ用の7~50MHzで使えるアンテナチューナーを製作しました。


①使用したアンテナについて
 アンテナは、JS1WWR局推奨のJINKING 7.2mをアマゾンで購入しました。簡単にテスターで抵抗を図ってみました。1段目(一番太いところ)は長さ方向に数Ωの導通がありましたが内側と外側は感電防止のためか導通はありません。そのため2段目の根元を少し紙やすりでこすってカーボン表面を出したところに目玉クリップで挟むようにしました。目玉クリップと竿の間の抵抗はテスターで見ると50~70Ω程度ですが不安定でした。グラウンド線は使用最低周波数を7MHzとするのでとりあえず10mを1本用意しました。
 設置はアンテナを木造2階建ての2階のベランダの木製手すりに紐で立てかけて軽く固定、グラウンド線を地面に垂らす感じです。給電部はこんな感じです
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②インピーダンスの測定
アンテナエレメントにTE2101アンテナアナライザーを直結して50MHzまでのSWRをみました。HFでは7MHz付近で少し下がっているところがありますがそのまま使える周波数はなさそうでした。他の方のブログを見ると高めの周波数に共振したとか見たのですが、設置条件やアンテナのカーボン量やロッド間の接続部の構造で異なるので再現性はあまりないかと思います。

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次にnanoVNAに直結して使って各バンドのインピーダンスをみてみました。画面の文字が全く見えないので、表面実装部品の作業に使っているヘッドルーペをつけて読み取りました(笑)
impedance

直流抵抗もあるので7MHz以上のインピーダンスは高めでスミスチャート上では同じような位置にプロットできますので、回路は下のL型でマッチングはとれそうです。
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目的周波数の下と上の各定数を一応確認してみます。チューナーとしては、Lが0.2~3uH程度、Cは10pF~300pFくらいあれば良さそうです


●7MHz
7mhz


●50MHz
50mhz


③製作
1W以下のQRPなので部品は小型のものを使用しました。コイルは、T50-2に2回づつタップを出して12回路のスイッチで切り替えるようにしました。最大24回巻きでそのときのインダクタンスは3.5uH程度となります。バリコンは320pFのポリバリコンです。写真のスイッチは一応バリコン位置を変えれるように付けましたが、実際は不要です
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④マッチング特性
計算値とは少し異なりますが、7~50MHzまで問題なくマッチングが取れました。
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⑤運用結果
日曜朝の9時から10時半までの90分で7~50MHzまで順番にWVU-604F2で200mWでCQを出して交信してみました。同時にPSK reporterでもモニターしています。この日は、50MHzでもEスポが出ており西側がオープンしていたようです。
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●7MHz
近距離にオープンしていたのでCQを出して連続で呼ばれていました。20分で1~3エリアの12局とQSO
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●10MHz
7MHzと同様に近距離がオープン。10分間で1,3,4,7エリア5局とQSO
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●14MHz
オープンはしていましたが、14MHzなので近場の局からは呼ばれることはないので、交信ゼロ
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●18MHz
このバンドもDX狙いの方が多いので中国あたりまで飛んでましたが、ローカルさんが呼んできてくれたのみ
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●21MHz
18MHz同様、飛んでいますが応答なし。
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●24MHz
Eスポで4エリアの1局と交信できました。
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●28MHz
このバンドはアンテナの調子がよいのか、7000km先までよく飛んでいるようでした。残念ながら交信はなし
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●50MHz
Eスポで6エリアが見えていましたが残念ながらPSK reporterでは飛んでいませんでした。しかしながらローカル1局と交信はできたので50MHzも使えることがわかりました。

⑥まとめ
簡単に設置できてQRPでも7~50MHzまで楽しめました。ATU全盛の中ですが、こういうシンプルカプラも移動の際に軽量で良いのではと思います。

今後、ケースは移動によいようにもう少し小型化にしてチューニングしやすいように反射電力計を内蔵したものを製作する予定です

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